令和七年度 一次試験 財務・会計 第1問 ― 貸倒引当金繰入は「販管費だけ」と思っていないか? ―
【正答率ランク:C(40%以上60%未満)】
一見すると基本的な貸倒引当金の問題ですが、損益計算書上の区分まで意識できていないと落としてしまいやすいレベルの問題です。
この問題は、貸倒引当金繰入の処理区分を正しく理解しているかどうかを問う、典型的な“知識の深さ”を測る問題です。
私を含め、間違ってしまった受験生の多くは「貸倒引当金繰入=販売費及び一般管理費」と覚えており、実務の損益計算書(PL)を見た経験があるかどうかで、正解にたどり着けるかが大きく変わります。
なお、本記事で扱っている問題は、中小企業診断協会が公開している一次試験の問題をもとにしています。
詳しい問題文は、協会公式サイトのPDFもあわせて参照してください。
中小企業診断士一次試験(財務・会計)公式問題PDF(協会サイト)
1. 貸倒引当金繰入は、販管費にも営業外費用にも入る
貸倒引当金繰入は、対象となる債権の性質によって、損益計算書上の区分が変わります。
■ 販管費に入るもの(営業債権)
- 売掛金
- 営業活動から生じた未収入金
■ 営業外費用に入るもの(金融債権)
- 短期貸付金
- 長期貸付金
つまり、貸倒引当金繰入は「販管費だけ」と覚えていると、この問題は絶対に解けません。
実務のPLを見たことがある人ほど、自然と区分できる論点です。
2. 今回の問題が測っている“本当の力”
この問題は単なる計算問題ではなく、次の点を理解しているかを試しています。
① 営業債権と金融債権の区別ができるか
- 売掛金 → 営業
- 営業活動から生じた未収入金 → 営業
- 短期貸付金 → 営業外(金融)
② 貸倒引当金繰入の区分をPL上で正しく処理できるか
- 営業債権 → 販管費
- 金融債権 → 営業外費用
③ 差額補充法の本質を理解しているか
必要額 − 現在の残高 という基本を、債権ごとに正しく適用できるか。
つまり、「PLの構造を理解しているか」 が問われているわけです。
3. 実務のPLを見ていないと落としやすい理由
実務のPLでは、貸倒引当金繰入は次のように分かれます。
- 販売費及び一般管理費:売掛金・営業未収入金の貸倒引当金繰入
- 営業外費用:貸付金の貸倒引当金繰入
診断士の受験勉強だけしていると、どうしても「貸倒引当金繰入=販管費」と覚えてしまいがちです。
しかし、実務のPLを見ている人は、自然と「貸付金は営業外だよね」と判断できます。
4. 今回の正解がイ(950,000円)になる理由
販管費に入るのは、次の2つの債権に対する貸倒引当金繰入です。
- 売掛金:10,000,000 × 2% = 200,000
- 営業活動から生じた未収入金:4,000,000 × 20% = 800,000
合計:1,000,000円
差額補充法なので、既存の貸倒引当金(50,000円)を差し引きます。
1,000,000 − 50,000 = 950,000円
これが「販管費に含まれる貸倒引当金繰入額」であり、正解はイ(950,000円)となります。
5. この問題から学べること
- 貸倒引当金繰入は販管費だけではない
- 営業債権と金融債権の区別が重要
- 実務のPLを見ているかどうかで差がつく
- 診断士試験は“知識の深さ”を問う問題が増えている
財務・会計は、単なる暗記ではなく「実務の感覚」を持っているかどうかが得点差につながります。
今回の第1問は、その典型例と言えるでしょう。

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